2011年02月13日

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ゴミを出そうと思った。


比喩的な表現でも何でもない。

ただ、ゴミ捨て場に燃えるゴミを出しに行こうと思った。

棚に掛けてある、燃えるゴミが詰まった袋を取って、

台所にある生ゴミの袋をそこに詰めて、袋の口を結んで、

ベランダに出ていたサンダルを玄関まで持っていって、

サンダルを履いて、ゴミ袋を持って、

玄関を出た。




寒かった。

やっぱり。

昨日よりは幾らかましだけど。

どうせ今日も晴れていて、

空気は透き通っていて、

空はずっと高く遠いところで闇に溶けて、

その闇の向こう側からこちらに向けて

すっと細い針が真っ直ぐに貫通していて、

針の先は僕の目にも少しだけ届いて

ちくりと刺さるのは星の光で、

そんな天気だからどんな暖かさも

直ぐに空に吸い込まれて、

それで寒いんだ。

またか。




「どうせ」とか「また」とか「やっぱり」とか

そういう言葉をよく使う気がする。

こんな時間に起きているのだって

「また」だ。

理由は「やっぱり」で片付くことだ。

色々な説明が面倒だから

全部過去に代弁してもらう。




玄関を出て階段まで行ったところで、

「どうせ」の快晴を確かめようと

空を見上げた。

雲は見えない。

星が見える。

けれど少し暗い。

コントラストが低い。

星はぼんやり滲んで薄暗く

星の無い場所は一様に灰色をしている。

快晴じゃないのか。

顔に冷たいものが当たった。

雨か。

またか。




なんだ。

雨が降ってもやっぱりこの感想じゃないか。

雨は雨でうんざりだ。

冷たい冬の雨の中を自転車で走る。

この一行でもういい。

感想文はいつでも同じだ。




薄暗い星が光る空を見上げながら

どうなってもがっかりする自分にがっかりしていたら

一つ星が動いた。

そういう風に見えた。

薄暗い光の粒が

少しずつその明るさを増しながら

ゆっくりと緩やかな曲線を描き

見上げる僕の視界から消えた時に

頬が冷たかった。




雪だった。




感想は無かった。

出なかった。

僕は忍び足で階段を降りて

そっとゴミ捨て場にゴミ袋を置き

マンションを出て車道まで出て

辺りに車も人もいない事を確かめてから、

もう一度空を見上げた。




今はもう無数の星が

それぞれの曲線を描いて

僕の視界の縁に降り注いでいた。

一切の物が動かない中で

一切の音が無い中で

それら無数の星だけが

止まった時間に染み込むように

ゆっくり、そして静かに動いていた。




「連続と分断」(2009/12/21)


posted by たろ! at 21:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日常計画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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